夕海/梨玖
 
公園の夕刻を鴉が告げていく。
またね。別れを告げる女の子。途切れ途切れに笑う。最後のひとりだった。
そうしてまたぼくはひとりぼっち。
完成間際の砂の城。どうしようもないよ、とりあえず完成させようか。独り言。

出来る限り大きくした。トンネルも作った。手を伸ばして突っ込む。
ぱちん、と瞼を閉じる。指先に温かい感触を覚えた。ぎゅ、と優しく握られる。覚えのありすぎる体温。
――目を開ける。ほら。
常に薄い幻想と期待はぼくを取り巻いて、いて。

靴が汚れるのも知らない。蹴りあげた砂。土塊になる。城は崩壊する。期待も崩れ去る。
埃っぽくて少しだけ噎せた。
ぽつり、おかあさん。
呟い
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