飛行船のなる樹/
塔野夏子
うして飛びたっていった飛行船が
遠くの知らない空で
けれどここの空からつながっているには違いないどこかで
得体の知れない火に撃たれて
燃え落ちてしまう夢だ
僕はそんな夢から目ざめるたび
それが夢だけなのか不安になる
それが夢だけであるように祈る
ある夜
得体の知れない火が丘の上に降ってきて
飛行船のなる樹がすっかり
燃えてしまう夢を見た
怖くて目ざめた僕は
夜の闇の中震えながら
それが夢だけであるように祈った
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