落下/寒雪
 
て朝の景色に居座ろうとする
肌寒い空気を手刀で切りながら
ビルの屋上に向かったのだ
屋上から見る地上は豆粒で
昔見た箱庭のようでジオラマのようで
一瞬自分が世界のすべてを握っていて
歩いてる人間を歩かせるのも走らせるのも
自分の手の中に決定権があるように思えて
ひとしきり笑った後おれは
頭の中にへばりついて離れない
おれの傑作な考えを実行したのだ
だが
実際の結果はおれの理想を裏切った
だからおれは今こうして落下を続けている
こんな死に方をしたら
おそらく遺書のない自殺とか言われるのだろう
実際生活は苦しいし他人にも時々死にたいとか
日々の辛さを愚痴ってきたのだから
今一番後悔してるのはそれさ


いい考えだと思ったんだ
念じたら空を飛べるって
きみもそう思わないかい?

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