晩秋/……とある蛙
 

風が無い季節に
病葉(わくらば)が落ちる

眼に見えない時間が
自分の掌から零(こぼ)れ落ちて行く

突然訪れた季節に」
黄色の銀杏並木は
幹まで落葉で覆われ

道行く者の足を掬おうと
黄色の滑りやすい絨毯が
坂道を覆う

足元を見る余裕もなく
歩み続ける者の
頭上を掠める鳥一羽

不吉な予感はするが
捕捉することは出来ない。
身を任せて切り抜けるしかない

深々と秋は過ぎ
冬はそこの電柱の陰から
こちらを覗いている。


戻る   Point(8)