妖精/裕樹
箱の中に妖精を飼っている、と男は言った。
男が言うには、妖精には性別はないのだそうだ。
そんなことを書いている文献もしらない。妖精がどういう姿なのかも知らない。
男は歌うように言うのだ、妖精には羽がないのだ、と。
よくあるイラストのように美しい姿ではない、という。
まるで芋虫のように手足のない形で、ゆっくりと動いているのだという。
「それがすごく美しいんだ」
と、男はうっとりという。
見るかい?と聞かれたが、私はそれを丁重に断った。
その夜のことだ。
私は夢を見た。
夢の中で男は箱を持って立っていた。
その箱をやおら床の上
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