NAI(内)/ホロウ・シカエルボク
レンジフードを温めても
冷たいままで食べなきゃいけない
宅配便は運んだふりだけする
だから僕も何も持たずにサインをする
考えたけれど何も出てこない
書こうとしたけれどペンシルに芯がない
排泄をしたけれど胃腸は空っぽで
爪の先ほども便器は汚れなかった
印字されなかった本を読んでいる
枠線だけの漫画を読んで大声で笑っている
大きく開けた口からは空気の漏れる音すら出てこない
最後の頁をめくったら最初のページに戻る
鏡を見ても名前が思い出せない
髪を切っても名前が思い出せない
頬を殴っても名前が思い出せない
奥歯を抜いても名前が思い
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