マイナス1.4等星のシリウス/北大路京介
 
ことぐらいしか・・・
 

   あの頃に歪んだり狂ったりしたものがあるのだろう
 

同じ歳の子たちが
「一等星」という言葉を習う何年か前に
「マイナス1.4等星」を知っていたのだから。

同じ歳の子たちが知らないことを知っていたのだから。

太陽よりも大きい星があることを知っていたし。
太陽系の外にも まだまだ星があることも知っていた。
宇宙は広いことも知っていたし。
神様にお祈りしたって、消えていく同じ歳の命があることも知っていた。
 
親が見舞いにきてくれたところで、面会時間以外は独り。
妹は、祖父母宅に預けられていた。
僕より幼い妹が、両親のお迎えを待っていた。



  最終面会時間が過ぎたら、独り

  寂しいからといってナースコールのボタンを押すような知恵はなかった



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