自殺と未来の十代のころ/吉岡ペペロ
いのちを軽く人生を軽く
かんがえていた訳じゃない
十代のころ
自殺と未来がいまよりも
そばにあった
ただ
いまよりもずっとそばにあったんだ
そんな生死の
皮膜のうすい十代を
送っていたということだ
なにかに失望し
じぶんじしんに失望し
自室に電気をつける気もしなかった
町のおとが聞こえていた
枕はなみだでスタンプされて
それをたしかめたくて
蛍光灯のスタンドに手をふれた
(しずかな白に照らされて)
本当にだめなとき
日常の無生物らだけが
はげましてくれていた
いのちを軽く人生を軽く
かんがえていた訳じゃない
十代のころ
自殺と未来がいまよりも
そばにあった
ただ
いまよりもずっとそばにあったんだ
そんな生死の
皮膜のうすい十代を
送っていたということだ
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