月が来る、音のない葬送のあとで/ホロウ・シカエルボク
日没、砂浜に迷い
野良犬の
鼻先真似
ひくつかせ
虚を探り
塩粒の混じる
匂いは
血液を沸き立てる
唾を吐き
熱を冷まし
人ならぬものが
さ迷う気配
目を閉じて
取り込まれぬよう
ひそんで息をして
踵が沈み込むので
月が空にない
踵が沈み込むので
日没のように
岬の方で
いつか死んだ誰かが
また、風に流れる
朽ち果てた身を知らず
また、見下ろしている
波打ち際
テトラポッドに
もたれて
哀しい軌跡を
読んだ
ひそひそと
いま
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