ひとひらの雪/月乃助
霧氷を知らない 海風の町に
ひと夜の冬化粧
許された 雪の舞う月の夜
すべてを白く染める 悪のような力で、
あなたの寝室の灯かりが消える
僕は自分であろうとして
逃げ出したくなる 狂恋に
身を任せ
たどり着く場所は、いつも同じ
無防備な月が悲しみに 満たされている
欠けるほどに
壊れるほどに
凍える足で雪に佇み
暗くなる窓(みらい)を凝視する
あなたの差し出す林檎の味を思い出しながら
体ではない 救いを求めて
つまずくように雪を踏む
消し去られた枷を見定めようと、
紅葉と黄葉のつぎはぎだ
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