冬の高台にて/塔野夏子
 
見わたす夕空は
菫青石(アイオライト) 藍晶石(カイアナイト) 天青石(セレスタイト)のモザイクです
君の微笑みに
さびしい火がともります
ああそのせいか
君の黒い外套 黒い手套
すぐ傍に居るのに
不思議に遠い影(シルエット)のように映ります

けれどどうか
今はその火を絶やさずに居て下さい
それを見て居ると何だか
二人逃避行のさなかのような
そんな気持ちになりもするのです

風は無くただ冷たい空気が
しんしんと降りつづきますけれど
少しずつ昏さを深めてゆく空の下
今しばらくは此処を立ち去らずに居ましょう




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