ひとつ 遠く/木立 悟
 




はばたくばかりで飛べない暗がり
右目の奥を巡っている
音の無い
騒がしい動


葉の影がこぼれるなかに
歳をとらないものがいて
影をつなぎ 鳥を描く
少し離れた 冷たい明るさ


深みどり
黒に傾き
明るさは遠く
音は 音の無さへと降りはじめ



指のはざま
音の泡
色ともかたちともつかないふちどり
曇を動く 空を動く
指のはざま



現われはじめ
消えかける
血を噴き出す音たちの
目覚めとは言えない直ぐの道のり


香のにおいの紙に字を書き
たどりつけないものにはばたく
声を 動きを
かすめてゆく


白から蒼へ輪を渡し
渡し疲れて夜に還る
頭の後ろの遠い鏡へ
ひとつとふたつの指を映す
























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