つわる/salco
 
ひりつくような塩素混じりのお湯に
浸されたお前達は
早くも老学者のような気難しい顔をして
不快な世間にイヤイヤをし続けるが、
誕生の重い疲労にうつらうつらし始める
内心びくびく震え拳を硬く握っても、
今や相手のなすがままの
小さな小さな気難し屋に過ぎなかった
赤く、皺だらけな、
醜悪極まりない動く肉塊
―― それがお前だった
儚い喜びと、行く当ての無い怒りと
失望と悲愴のありったけを
その小さな容積に詰め込まれて行く
柔らかな容器 
―― それがお前だった

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