黄昏/岡部淳太郎
 
空が開かれていた間に
あつまっていた光が
散り散りになろうとすると
向こう側で何かがゆっくりと閉じ始める
地平線の近くで
やわらかく昏いものが
せいいっぱいに手を伸ばそうとしている
その中でばらばらになった光は
ひとつひとつの粒々になってまで
まだ必死に輝こうとしていて
その色を白から
赤に近いところまで変化させる
みんなこうして
あつまっていたはずだった
それがいまではこんなにも
頼りなく弱々しく
消え入りそうになっている
それらがほんとうに消えて
山や海や塔の向こうに沈みきってしまうと
空はふたたび
今度は昏さのために開き始める
光のその明るさのために
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