誰かの匂いがしてた頃/番田
色の中に 見せてよ
私のまっさらなこの 髪の毛に 口づけてよ
そういってた あいつは
今ごろどこだろう
*
夜明けの 部屋の彼方で
手にした体の暖かさ
僕の 意志を 弾いた
この温度は 今は どこにある
カラオケボックスの中で色々な曲を熱唱し
ドリンクバーも頼まずに 現実を忘れて歌った
君は大学受験の志願書を置いてどこに姿をくらましたのだろう
今となっては気にとめる者もいない
*
朝の駅前のどこかに
色々な形をした ネオンサインが 灯る
声をからして 叫んでいる人が
ビルの体にアルカノイドのように 声を 反射させ
スモッグの 向こうに放っていくのだろう
何もかもが忘れられるべきなのだと
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