交錯詩「月」 フライハイ/森川 茂/within
柔らかかった肉塊を固く硬直させてゆく
わたしは真冬の冷えた月のように冷たいから
いつか死ぬ母の背中から
春の木漏れ日のようにほんのり暖かいきみに
上ってくるものは
到底 相応しくはなかった
約束されない満ち干きの
今はもう 夢の中ですらきみには会えず
軌道を辿ってやってきた
いつか一緒に見た三日月にわたしはひとり腰掛け
私が待ち続けていたもの 蜻蛉の一命
眼下に遠くきみを見ている
いっ時ひとつになろうとも
会えなくなって 年月が経って
煙となって上ってゆく
きみが幸せであるよう 涙で月に祈るしか術はなく
先へ先へと押し出され
会えないけれど あの日見た月を
私は私でなくなってゆく
それぞれの場所で 同じ月を見ている
ピリオドに向かって放たれたものの宿命だから
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