退社時/朧月
 
どうして夕闇は
せかすように美しいの?
置いてゆかれる不安はもうないのに

雑踏に踏み入れる勇気が
ないのにたどり着いた
いつもの という駅

帰ろうとつぶやくと
さみしくなるのは なぜ?
また という改札

手と手じゃないのに
離れるのは息がとまりそう
あなたとの距離は遠くしたくない

何度やっても計算があわない
とあなたが差し出す書類には
未来につながる数字たちが
整然と並んでる

はじいて
正確なこたえはでるけど
まじまじとみたあなたの横顔
不思議な気がする
私のオフィスは古い型のものしかないのに


夕闇にせかされつつ帰る
瞼が水分を含みつつある中


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