褪せてゆく秋の或る一日/吉田ぐんじょう
 
となく覚えがあるこれは
思春期の頃に書いた手紙だ
あのとき
あんまり強く握りつぶしたから
掌の中に入り込んでしまったのだろう
改めて読み返したくもなかったから
こよりのように細くよじり
また穴の中に落としておいた
こつん
と小さな音がして
すこし胸が痛んだ


ふと油断すると
なんにでも枯れ葉が舞い込んできていやになる
煮込み料理の中や
お湯を満たした浴槽や
下着の内側や
開いた文庫本の間や
スリッパの先端などに
気づくと枯れ葉がいっぱい混ざりこんで
かさりかさりと音を立てている
よじれている枯れ葉はどことなく
何かのぬけがらのかたちに似ていて

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