褪せてゆく秋の或る一日/吉田ぐんじょう
 


凍ったような青空の中を一艘の船が
西から東へ進んでゆくのを見た
おそらく西に沈んだ月を
東の定位置へ戻す船なのだろう
さざなみが白く航跡を描いて
航跡はそのまま雲になり

また今日がはじまる


このごろの陽気のためだろうか
掌の真ん中らへんが擦り切れて薄くなり
だんだん穴があいてきた
ハンドクリームを塗りこんでいるのだが
まるで紙のように
がさがさ音を立てるばかりで
一向に穴は塞がらない
修繕するのも面倒だし
そのままにしておいた
ある日のこと
掌の穴から何かがぽとりと落ちた
拾い上げてみると
くしゃくしゃのルーズリーフだった
なんとな
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