コード 1/……とある蛙
弾けもしないキーボードに指を添え
弾けもしないはずなのにコードを押さえ
弾きもしないはずなのにコードを鳴らす
知りもしない唄を思い浮かべ
知りもしないはずなのに唄を口ずさみ
知りもしないはずなのに唄を歌い出す
しかし、
唄の言葉は外で無く
唄の言葉は内に向き
言葉が脳髄で霧散する。
次第に人との距離が増え
次第に人への言葉が減り
次第に人と会わなくなり
色は次第に輝きを失い
色は次第に鈍くなり、
色は次第にモノクロに
結局
文字は眼にできる形象で
文字は漂う大きな埃で
文字は無意味な記号の羅列で
それでも何かに成りたくて
もう一度向かうキーボード
何ほどか デタラメな和音に身を委ね
これから死ぬまで漂うか
これから死ぬまで楽しむか
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