中編小説 心と口と行いと生活で 作 丸山 雅史/時間が蕩けるアインシュタイン
 
   一 二十五歳

 土曜日になると、とある森の奥の拓けた場所に白亜の巨城が現れる。私は毎週、土曜日になると、其の巨城へ行く。其処には此の世のものとは思えない位の、美しい容貌の、王女が一人で暮らして居る。王女の歳は私の年齢より四つ下の、二十一歳である。私は心から王女を愛している。その為、毎週毎週、土曜日が待ち遠しくて仕方がない。その王女は私が学生時代憧れていた、躁鬱病で自殺してしまった女性の先輩に瓜二つで、私の古く錆付いた感情を、逢う度に、少しずつ研磨してくれるのだ。

 私は詩人を生業としている傍ら、介護職に就き、高齢者や障害者の生活の手助けをしている。私は口数が少ない代わりに、詩作に
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