夢(仮題)/佐倉 潮
 
ている連中があたしを追っている」彼女はまた笑い立ち上がった。
「あなたももうすぐその一人になるわ」
 女は綴じた物を僕の前に差し出してこう言った。
「はやく、こんな物は燃やしてしまいなさい」

 僕の手はその物を受け取ろうとしたが、それよりも速く、外部からのドン・ドン・ドンという音が女の姿を、扁平な何かに変えてしまおうとしていた。ドン・ドン・ドン、ドンッ! 女は塔の頂き。その言葉を僕は最後に知って、壁が崩れたことを次に知って、その次はまだ、思い出せずにここにいる。



戻る   Point(1)