花言葉/殿岡秀秋
のほとりにうずくまって探す
草の中に五つ葉があって
露を涙のように乗せているのをちぎる
大人になった少女が現れる
「まだ探しているの」
サラブレッドのように伸びた脚をスカートから出して
うずくまるぼくの前に立つ
ぼくは掌をひろげて
濡れている五つ葉をみせる
「それはクローバーではないわ」
「きみは幸せになれたの」
女は当然という顔をしてうなずくと
噴水のほうへ
馬のように腰を動かしながら歩いていく
手の土をはらって
何か聞き忘れたことがあるような気がして
小音楽堂の脇を女の後を追って歩く
大きな噴水が風になびいて
鳩が飛び立ち
人影が消えていった
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