残照 / ****'98 '01改編/小野 一縷
 
午後3時35分
太陽というには あまりに白く巨大な門
手の平をかざす 
高すぎる  遠すぎる   眩しすぎる
門よ  これ以上
この体を 融かさないでくれ


足りない
血が足りない
君が血で書いていった詩   「赤い糸」
君が引いていった 言葉の糸  
君が繋いでいてくれた 命の糸 生命線



やがて 「きみ」もいなくなって
Nとは話さなくなった  Kとは二度と会わないだろう
Tとはいつか喧嘩になる  間違いない
金がない 日雇い銭がない
決定的な欠落だけ ここにある
停泊していた 今が 不足から不在へと
出航する


もう これは 旅で
[次のページ]
戻る   Point(4)