ジャパニーズ・ライスボールをふたつづつ/umineko
死が消えていったね
薄暗い画面を見ながら
私は思う
地面が割れて飲み込んだ
山が崩れ地を這った
水がすべて押しさらった
今も
だけど死は画面にはいない
あるのは
凍えそうな体育館の
毛布の数ばかり
死はいつも隣にいるのに
誰も見ようとはしない
かつては
病気や
津波や
いくさや謀り事だって
いつもそばにあった
悲しみの意味が
さみしさの訳が
駆逐され
街はきれいになってゆく
10年前
アメリカの新聞は
こんな風に書く
木と紙でできた家に住む
老人たちは寄り添って
ジャパニーズ・ライスボールを
ふたつづつもらう、
と
あれから
私は変わったのか
あるいは
変われなかったのか
薄暗い画面を
みつめながら私はずっと
真夜中
泣いていたり する
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