闇(仮題)/佐倉 潮
 
 かたことの闇が砂鉄のように水平線の向こうに吸い取られ、僕は少し自由になって町を歩いて回る。通りにはシボレー、マーチ、プレリュード。すなわち現代の馬たちが、それぞれの厩舎に寝そべっている。機械も動物と同じだ。退屈な時はひどく退屈な顔をしている。その脇を口笛で通り過ぎる。

 世界はガールズ・トークのようにかしましいだろって想像してたから、少しばかり意外な気分になる。世界はひどく静かだ。どうやら今、考えているのは僕ひとりのようだ。動物たちも機械たちも考えないし、歩かない。みなひっそりと地べたに寝ている。考えているのは僕だけ。考えているのは僕だけではないと、考えているのはそう、僕だけ。

 切
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