雑居房の英雄/……とある蛙
 
まロックをかけ忘れていた車があったと思い、重いドアを開けたら、中に仮眠中のドライバーがいてそのまま御用だ。間抜けな話でその照れもあるのか わざと捕まったと吹きやがる。ぬぁーにが世間を見返すだ。新聞の片隅にも乗らないちんけなこそ泥の爺だ。世間から無視されていたことは本当だろうから捕まらなければ注目が集められないと思っているようだ。つまり完全犯罪では自分自身は注目されず、行為だけが新聞に出てしまう。これではとてもテレビタレントのようにはゆかないのだ。そんなことは分かりきっているくせに奴は虚勢を張っている。そろそろ面倒見で雑居房から刑事部屋にゆく頃だ。爺は年寄りだから本を読むには目が悪いし、話も合わない
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