雑居房の英雄/……とある蛙
 
初めて入れられた留置場の雑居房の 小さな窓から街の灯りがこぼれ落ちる夕暮れ、俺は隣にじっと座っていた随分と顔をくしゃくしゃにして話す爺と暇な時間を潰すために話を始めた。「光り輝く神が此処に居たって、ニューフロンティアを唱える政治家が此処に居たって、俺には関係ありゃしない話だ。俺は俺を無視し続けた世間を見返すために此処にいるんだ」と随分威勢がよい。そうはいっても彼はいわゆる車上荒らしのこそ泥だ。しかも鍵を開ける技も持たず、キーのかけ忘れた車を狙う古典的なこそ泥だ。ところが最近は成功したことがない。リモコンキーでロックが懸かり、ほとんどの高級車はロックされており、彼はほとんど仕事が出来ない。たまたまロ
[次のページ]
戻る   Point(4)