最終電車の窓の向こうに/番田
眠い思いで電車に乗って
どこに帰るというのだろう 僕は
橋を渡って そして
今日も 広い 川を越えていく
詩を書こうと思ったのは10年前のこと
僕にとっての詩は何でもなかった
教科書に載っている詩は ぜんぶ 面白くなかった
当たり障りのない 言葉ばかりだった
文部省の教科書だから くだらなかった
毎年毎年 そうだった
塾のテスト問題のほうが遙かに面白かった
特に覚えているのは 村上春樹の文章だろう
*
詩を書こうと思ったのは10年前のことだろう
僕は佐野元春や浜田省吾に傾倒していた それに
尾崎豊に長渕剛に ビートルズ
だから 詩を書こうとしたんだろうなぁ
現代詩手帖に詩を投稿した時は中学二年だ
「カラス」という題名の自信作だった
開いてみると もちろん載ってはいなかったが
1200円もするその雑誌にはある不思議な詩人が載っていた
そんなふうな出会いはいつの時代もあるのだろう
今でもそれは本棚に入っている
僕がそれを読むとき いつでも
彼が時をこえて 魔法の言葉を 伝えに来る
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