晩秋の日の夕暮れ/番田 
 

魚体の見えた気がした
部屋の片隅で
過去の私であることを思い浮かべた
朝である湖畔で


一つの思いの並べられた水面に
真っ白な釣り糸を垂れると、
真っ白の何が釣れるのかと、
巨大な魚影の到来を予感させられた


練りエサを指先で練り
震える指先についたその匂いをかいでいた
震える鼻水をたらすとあの納豆のような糸を引き、
遠くから駆け寄ってくる野良犬の声に脅えていた


土手の裏手だから安全だろうと
淀みの波紋の目はアタリを待ち、
大きな蛇が水面を泳いで渡り、
小さな子供が橋でさようならをした



オモリを変えてはみたけれど、
どうも今日の水温の具合は悪かった
そして今日の練りエサは粘り気が悪かった
だけど定価350円の代物だけのことはあるー


コンビニでエロ本を買いこんで、
薄すぎるビニール袋を揺らしながらこいでいく
厚すぎのプラスチックケースのオモリが砕けていく
重すぎの自転車がガタガタと坂道でうるさい


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