ディスプレイの裏側で/番田 
 
ろ、俺はただの浮浪者だ。


五反田の路地裏をさまよい歩いて、パナソニックや資生堂の立ち並ぶビルの前を通り抜けて、カレー屋で何かを食べ、吐き気を催しながらも家に帰ってきたんだ。



外は明るい通り雨が過ぎていくよう。…私は雨を見る。その流れ出した雨粒を睨み付ける。どこだろう。誰に向かってだろう。よくわからないほどに、今日の体は若すぎた。


(君はどこ?そこで誰と会話をたのしんで…明るい太陽が昇った…、白のテーブルに赤い紅茶のカップがあるのだろう…)


結局僕には具体的な言葉が足り無すぎるような気がした。君は部屋で怒っているんだろう。ジャングルの深い闇の奥に息を潜める不気味な女の姿を見た。逃げまどう幼子は紛れもなく私だったのかもしれない。銃を放つと、ナイフを使って木によじ登る。ヒョウの影に脅える猿のような…パチンコ屋から飛び出してきた、未だ若い、脅えた瞳をした青年の体のように。


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