ディスプレイの裏側で/番田
時の隙間に迷い込んだ男は私なのか。私はもう定時だから帰りたかった。回りは上がろうとはしない。売り上げの上がらない会社にいてもしょうがない。もう辞めるべきだな。電話が鳴る。誰か取れよ。俺は疲れたんだ。一日中外を回っていたんだから。早くしろ、鳴りやむぞ。ああ切れた。ー家、帰りたいな。
家で仕事をしたいぐらいさ。今日はもう寒い事だしどうするわけにもいかないな。冷えるよ、本当に。誰かの体の鼓動していたあの温度が懐かしい。骨と骨を互いに確かめ合っていたあの頃さ。君の唾液の味は忘れてしまったよ。唇と唇の堅さの違いが見えた。…一体何が私を殺すのだろう、社会平和めバカ野郎。野宿して夜を明かしてみろ、
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