輝きの残骸/裕樹
 

 思いを遂げて絶頂を迎え小さな死を得るように
 
 朱の美しいななかまども
 今は街路樹の一つでしかない
 しかも貧相なたたずまいの裸の枝を方々に伸ばして
 なんの彩りもないままに
 そこにあるというのに
 また来年の美しい恋を夢見て
 枝はしなやかに揺れる

 輝きの残骸は
 道路がすっかり乾いたころには
 いたずらな風が手伝いながら
 どこかへ逃げてしまうのだろう

 もう
 私は覚悟を決めたよ
 輝きの残骸を見つめながら
 ああもうはっきりと覚悟を決めたよ
 
 君
 冬が来るのだよ






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