輝きの残骸/裕樹
 
 
 
 雨を
 風を
 君は無情と例えたが
 ごらん
 あんなにやさしく美しいものはないじゃないか
 ゆうべの雨が
 ななかまどの葉をすべて攫ってしまい
 衣をはぎ取られた枝が艶めかしくポーズなどをとっている
 衣はと言えば根元に未練がましく重なり
 折り重なる蟲の死骸のように
 まだ雨の名残をのこして濡れて光っていた
 情事のあとだよ
 まぎれもなく

 ああ
 なんたる美しい交尾だろうね
 今あの枝は空に接吻したのだよ
 その証拠に
 よくごらんよ
 頂点を目指すように最後に背伸びをして
 残りの一枚がほら
 ゆっくりとはがれおちてしまった
 
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