音楽会/吉岡ペペロ
したんやで、
お母さんはすごいなあ、うまいなあ、そう言って涙ぐんでいた
彼女が泣くと残忍な気持ちになった
さいきん夜遅くウォーキングしていると何処からかピアニカの音が聞こえる
あのときの残忍な気持ちを思い出す
そういうじぶんにすりかわらねばいたたまれなかった
あのときの残忍な気持ちを思い出す
夜遅くもなると空気もいくぶん澄んでいる
町の音も間遠くしずかになっている
ふつう、とはなんだろう?
ふつう、でないことに人はひとり傷ついている
ふつう、そんなものあるのだろうか?
俺はそれを見つけたのだろうか?
ふつう、ではない人はどうしたらいいのだろう?
俺はそれも見つけたのだろうか?
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