竜化の滝ー塩原渓谷/……とある蛙
 
崖の上を覆う
赤い紅葉の
庇の下に
渓谷の底
竜が滑る。

鱗状の水飛沫(みずしぶき)
突然竜頭が
川底からなお落ち込む

崖の上には
紅葉楓の緞帳が
視線の上を覆っている
眼下に広がる渓谷の
竜の疾走感の爽快さ

しばし、下界で暮らす
竜になり損ねた拗ね者が
大きな眼を見開いて見る
渓谷を滑る竜の胴体

紅葉楓の色とりどりの
日毎に変わる
なり損ねた竜の黄昏は今
落葉寸前の楓のように
色褪せている。


戻る   Point(8)