冬支度/salco
秋になったら家を出る
軍手とシャベルを持って遠く遠く
九月いっぱいは歩き続ける
十月は釣りなどして過ごす
十一月が木々を染め出したら
場所を決めて、あとは待つ
落葉を敷きつめてその上に座ると
体の震えが葉を寄せ集めて蓑を作る
手紙は全部川に流そう
氷結しない内に
それから雪が降るのを待つ
稜線に降り来た雲が太るのを待つ
夜
眠りの間に雪が降る
朝
氷の真綿が一面だ
軍手をはめて作業にかかる
これでやっと家が持てる
かまくらの中に氷の炬燵もしつらえ
じっと冬を過ごす
誰も来ない
義理も責務もない
退屈という平穏と、孤独という静寂があるだけ
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