我家に米が無いこと/板谷みきょう
婦人服リサイクルの店「るうぷ」は
九年目で十年を待たずして
閉店せざる得ないことになった
彼女の夢の一つが消える
二台あった軽自動車も
彼女の車は手放すことになった
税務署から納税の催促の連絡が入り
分割で支払うことを相談に行った
担当者が我家の家計状況に
破綻し破産していることを
噛んで含むように話し始め
あからさまに
そのことに気付かないのかを
鼻で笑いながら見下した態度で
説明してきた
支払わない訳ではないのだ
支払えないから
分割で支払いたいと
相談に来たのだ
年末の何かとお金の入用に
年越しの為に
小銭稼ぎのライブツアーを
行うことを画策している
それにしても
米がないとは切ないものだ
代用食で乗り越えるにも
まだ十一月が始まったばかり
秋の収穫で一合の米を
寺の檀家が奉納してる
その米を寺では
今は食すことがないからと
我家に喜捨してくれる
あの寺に物乞いに行こうと思う
幼い頃
玄関の柱に掛けていた
米穀通い帳が懐かしい
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