麻薬/一 二
 

彼女のことを
慈しく愛しく
想っているか
どんなに沢山感謝しても
したりない
言葉にできない
感謝と崇高の念を抱いているか
彼女の無垢な優しさに
どれだけ私が救われたか
どれだけ彼女のことを想い
彼女の幸せを願っているか
彼女を如何に心から
魂から愛しているか…
「…うん…すごく…
すごく光栄だな…」
ただそう一言しか
返すことができない
彼女はまだ小さな子供で
私は法律上では大人
それが理
社会の定めた理
彼女を愛しているからこそ
その気持ちは
秘めなくてはならない
愛する人の側にいる
心からの喜び
そして気持ちを抑えなければならぬ
酷い苦しさ

「ごめんね…今日は…
これぐらいで…いいかな…
おにーさん…ちょっと疲れちゃって…」
心にも無い台詞
ずっとずっと彼女と
一緒にいたいと
騒ぐ気持ちを
無理矢理に抑えつけた

私だけの孤独な病室
静まり返った白い部屋
「私も君が好きだよ
君が大好きだよ」
一人呟いた声無き声は
エアコンの稼動音に
掻き消されていった
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