little bit little/Akari Chika
 
いる”
そう刷り込まれて生きてきた

だから後戻りしちゃいけないんだって。
だから私は幼い頃の私に

砂糖を差し出してあげることができない

ほんのちょっと
ほんのひとつまみの
砂糖を
ミルクに入れてあげることができない

代わりに 少し 涙を流す

今がいちばん大切なんだって
できるなら私も声高に叫びたかった

何故なの
それでも

流れ去ってしまったものすべてに
“待っててほしい”と
声をかけたくなる

あの一瞬を 愛してあげるよ、と 言いたくなる 嘘でもいいから

“おかえり”“ただいま”
遅かったね
時を遡るのは大変だったでしょう

ありがとう
待っていたよ
これから先は 今をいちばん大切にして生きていってね

あの頃の
私がすごく 欲しかったもの
それはたったひとつまみの砂糖

ほんのちょっとの 甘いモノ



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