練り歩く猫/Giton
 
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きょうは自転車には乗っていない
耳をぴんと立てて伸し歩く尻尾が揺れる
学生ブレザーを着た猫と肩を並べていると
人間の格好をしているのが恥ずかしい
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猫だけのことはあって歩いていれば
知り合いに出会う挨拶を交わし声高に
談笑する猫の知人は横にいるぼくのほうを
ちらちらと見る野良犬の格好でもしていないと
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ぼくはさまにならないだろう。こうして
連れ立っている時間には現実味がないが
ぼくには現実の日々よりも確かに思える
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誇らしげな喋り方がぼくの思念を安堵させる
手が触れるたび並んで腰下ろすたび舌を出して
向かい合うたび――ああ今だけを信じたいと思う
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