Allegro appassionato ma non troppo/Giton
じゃないのは解っている
ぼくのただの妄想に過ぎないと知っている
.
知っているから妄想がなくなるわけじゃない
どこに居ようと何をしていようと妄想だけが
ぼくの世界。森蔭の渇れ果てた水脈のように
勢い良く溢れ出す泪が欲しくなる
.
そしてまるでそれを察知したように電波を
キャッチしたかのようにきみは突然やって来る
なにゆえこれほど間が良いのか?偶然なのか?
偶然を思い違えぬよう自戒しつつぼくはきみを迎える
.
そしてきみはまるで逢瀬のようにやって来る
逢瀬でないのは百も承知。恋人、愛人、友達、…
こんな出来合いの日本語を習う前にきみとぼくの
人間関係の入れ子は同じなのだから
.
言葉に振り回されなければよいのだ
そこでぼくは言葉に振り回されぬよう
言葉に嵌められぬよう言葉の声は聞き流し
.
手が届かなかった過ちは繰返さぬよう
慎重に しかし揺るぎなく
胸の奥の声に従うのがよい
.
戻る 編 削 Point(0)