創書日和【揺】樹の記憶/
大村 浩一
遠いちいさな丘のうえで
初夏の梢が水草みたいに揺れていた
命あるもので揺れていないものは無かった
揺れながら皆まっすぐ天を指していた
ひとつとして同じ形の枝は無かった
ところどころ折れて歪んだ枝もあった
それでも同じ名の木だと分かるのが不思議だった
這い這いが精一杯の子供と眺めていた
戻れない日々だとは思ってもみなかった
立ちあがった私の顔に
木陰がゆっくりと揺れていた
2010/10/31
大村浩一
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