結界を出入りするもの/石川敬大
 

 部屋に気配があった


 濃厚な気配がただよっていたんだ
 さまようっていうのは
 タマシイに重さがあるからどこにも行けなくて
 詩のように浮遊している状態を指すのかもしれないね

     *

 中途採用がきまって
 京都で暮らさなくちゃならなくなった
 ぼくが
 家内を迎えにふわふわ
 と、洛陽か長安の、曲がりくねった路地をさまよっていた
 けさの夢みたいに
 あのとき
 ぼくはだれかの詩魂であり
 だれかのタマシイだったかもしれないのだ


 ぼくはおもうんだ
 詩も
 二十八グラム
 の、重さなのかもしれないって





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