軟らかな朝/桜 葉一
 
世界で最も軟らかな朝を迎えるのは
波止場に立つカカシだろう
なにかを守る分けでもなく
ただ海原を眺めて
往来する船を見つめているんだ

肩に止まってたカモメが大空に飛び立って
少し振りかえりながらウインクなんかして
そっとカカシにバイバイ
そんな朝がなんとも微笑ましいんだ

麦わら帽の変りに白い帽子をかぶって
カモメの住処となって
それでも誰かと同じように朝を迎える
それがなによりも柔らかい

海が
風が
潮を運んで
僅かな未来への余韻を残して
そっと立ち去っても
カカシは
一本足で立ち続けてる
淡く緩やかに解ける陽を眺めて
いつまでもいつまでも
過去の余韻に浸ってるんだ


カモメの重みに耐えられなくなった
カカシが僅かに傾く


地球がそっと傾いていた
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