黄昏の霊廟 ★/atsuchan69
 
黄昏の残光のなかに広大な庭園が拡がり、
背後には白く巨大なイスラム様式の霊廟が聳えていた

私の居場所はすでになく、見回すと海辺の庭も死人たちもなく
夕映えの空を見あげても花飾りのある有刺の縄梯子もなく
身を仰け反らせて天へと登るキャミソールドレスの君も、
ふたりだけの束の間の時間も、今日までの経緯も
それどころか、たった今の今さえもが‥‥総て消失してしまったのだ

そこには四本の小塔を従えた中央のドームがあった
まるで天文台を想わせる円い屋根はよわく柔らかな陽に照らされていた
大門から水路に沿って近づくと、頭にターバンを巻いた男が現れた
立派な口髭を生やしたシーク教徒の兵士はなぜか立ち止まり
やや小難しげな顔で同じように足を止めた私を睨むと
ただそっと右の手を、躊躇いながらも徐に差し出し、
地球上のどんな言語よりも確かな握手を、

この私に求めた )))














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