ひとつ 水日/木立 悟
鳥が月をついばみ持ち去り
別の月をどこかに作る
午後の舌を
午後にまみれた氷が過ぎる
ただひとつの音の他は
すべて重なり響く雨の日
ただひとつは道の灯に立ち
ひとつのふるえを聴きつづけている
水と景と水と景
はざまに入り込めないもの
雪と雪を招くもの
一途な痛みであろうとするもの
雨にかかとを押しつけて
罪より高く跳ぼうとしている
ひとつの音を
得ようとしている
半分が緑の午後の空から
無い音ばかりが降りつづく
石と道 響きのほうへ曲がる道
終わらない異議たち 標たち
まともさや
豊かさに長けた火を過ぎて
ざくざくと
水は狭い暗がりをゆく
指のすきま 陸のすきま
ただ傍らの時と雨
無いまたたきの
在りつづける日
水壁 油彩 水壁 油彩
何も見えない午後のまま
巡りは巡り
水際を水際にふちどってゆく
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