クダサイ/松本 卓也
 
三十九度の熱にうなされ
一リットルの点滴を打ち
体温だけは平常に戻しつつ
うなされた夢の底で願った

助けてください

翌朝に漢方薬と解熱剤を流し込み
空元気に満ち溢れた苦笑い浮かべ
ご迷惑をおかけしましたと頭を下げる
一匹の家畜が思ったこと

哀れんだ慈しみがこれほどに
痛々しく心に響くもんだろうか
無力でも悲痛でさえもない苦しみに
投げかけられた言葉の不条理なこと

理不尽なくらい

前後左右のアンバランスで
フラフラと揺れ動くだけだから
彷徨った現実と悪夢に挟まれて
助けを望んだ声は何処に掻き消えたのかな

その綺麗な耳を摘んで
大声で叫んで
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