過食の典 ー多重腹食堂/……とある蛙
 
その食堂はうらぶれた路地裏にあったが、薄暗い路地にその食堂の入り口だけ煌々と灯りが点っていた。いつでも結婚式が行われている。食堂の食材は何処で調達したか、随分と脂分の多い肉と水ッ気のない葉野菜と萎びた根菜である。スープは殆ど味がないが変な臭いのする脂が浮かんでいる。実に味わい深いとする料理評論家もいるが、総じて食えた代物ではなく、ネズミの餌という想念が路地裏を駆け巡っている。それでもその食堂が好きだという美食研究家達が集い、日々ネズミの餌を大量に食べ、ぶくぶくと太ってゆく。旨くないなどと口を挟む者がいると彼らは口を揃えて「料理の味の分かっていない奴だ。いろいろなものを味わってから来なさい」等と尤も
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