ライオンの爪あと/乾 加津也
 
 とぎすまされたナイフのように
 口元にはいつも
 ふっきれたような不敵な笑み
 藤木くんはそういうひとだ

二十歳すぎ
鼻と耳にピアス、眉毛なく黄金色の長髪をふりみだす姿はライオンのようで
「楽しければ明日(あした)死んでもいいよ」
「オレ つかまらなければ何でもやるぜ」
使えない
腐ったやつとは二度と口をきかない徹底ぶりだ

夜はコアバンドでうめくだけのボーカルだというが
彼が報酬を得るただひとつの方法は
とにかく人の倍はできると認めさせることだけなので
このためだけに全力で餌にむかう野生のにおいがした

4LDKの引越
現場で動くのは損だ
それでも馬鹿な
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